「独占協定の禁止に関する規定」について
改正された「中華人民共和国独占禁止法」の施行を徹底するため、中国の国家市場監督管理総局は「独占協定の禁止に関する暫定規定」を改正した。2023年5月1日より、新たな「独占協定の禁止に関する規定」(以下「規定」という)の施行が始まった。今回の改正は主に、独占禁止法の執行に関する内容をさらに詳細化し、法的責任に関する規定を充実させることに着目している。本稿では、その要点について簡単に解説する。
まず、競争関係の認定基準が細分化されている。関連市場の特定に関する規定が加えられており、潜在的な競争者に関する規定も追記されている。
次に、デジタル経済分野に関する内容が整備された。具体的には、価格計算のための「アルゴリズムとプラットフォーム規則」が価格固定の独占協定に該当することを明確にしたこと、販売市場と原材料調達市場の分割に関する規定に「データ」などの要素を適用させること、事業者がデータ、アルゴリズム、技術及びプラットフォーム規則等を生かして水平的・垂直的独占協定を締結する方法を列挙したこと、などが挙げられる。
そして、垂直的独占協定の判断が詳細化されている。この点においては、主に、垂直的価格独占協定に係る抗弁権とセーフハーバーに関する規定が新たに加えられている。
また、独占協定の締結における組織と協力に関する規定が細分化されている。これに関する条文は、より良いコンプライアンスを実現するために、関連する認定基準及びリニエンシー制度の適用ガイドラインを詳しく説明し、ガイダンスを提供した。
第五に、調査の手順についても、更なる規定が置かれている。例えば、立件・行政処罰の通知・行政処罰の決定などの手順の標準化が行われ、当事者の陳述権と弁明権等が保障される。加えて、通報者の知る権利をより良く保護するために、通報者へのフィードバックという特別規定が追加されている。また、リニエンシー制度の申込みとその認定手順が細分化され、法執行機関や事業者に対し、より明確で分かりやすいガイドラインが提供されている。その他、独占協定にかかる法執行の手順をより完備させるために、調査中断と免責決定の手順がさらに規範化され、詳細な規定を備えた新しい面談制度が加えられている。
最後に、法的責任について、幾つかの点において調整が行われた。つまり、①新しい「独占禁止法」に従って法的責任に関する規定が調整されている、②個人としての責任を負う事業者の法定代表者、主要責任者及び直接責任者について、処罰の軽減又は免除の範囲が規定されている、③独占禁止法の執行機関の職員による違法行為の取り扱いを明確にしている、④独占禁止法の執行において公務員の法律違反や犯罪の疑いが発見された場合、当該公務員に対する行政処罰と党の紀律処分との結び付けに関する新しい規定が追加されている。
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