深セン経済特区外商投資条例の注目点
2022年8月30日、深セン市人民代表大会常務委員会の会議において、深セン経済特区外商投資条例(以下「投資条例」という。)が審議・承認され、2022年11月1日の施行とされた。その後の9月5日、同委員会は投資条例を正式に公布した。
投資条例の公布には、2021年、深センには6,000社近くの外商投資企業が設立され、前年比30%以上の増加となり、外資の実際投資金額が100億米ドルを超え、前年比20%以上の増加で過去最高に達した、という背景がある。そして、2022年に入っても、その勢いが衰えることはなく、上半期のデータを見れば、深センにおける外資の実際投資金額が約58億米ドルで、前年同期と比べて約11%増となった。深センの外資吸収量が順調に伸びている理由の一つは、外商投資に対する深セン市政府の支援政策が継続的に施されていることにあると思われる。
投資条例は6つの章と46の条項で構成されており、総則、投資参入、投資円滑化、権益の保護、政府支援及び付則という6分野を幅広く網羅している。深セン市の地方法規である投資条例は、その上位法たる中華人民共和国外商投資法の一部規定を具体化し、投資促進に関するより詳細な規定を設けており、その主な点は以下の五つである。
一、外資投資関連部門の責任の更なる明確化
まず、市の商務部門と市の外事部門は、海外で行われる外資誘致活動を統合計画し、指導し、サービスを提供することになる。次に、市・区レベルの商務等の部門が投資誘致の方法を革新し、投資環境の宣伝を強化しなければならない。最後に、各区がそれぞれの地域の優位性や産業特性を考慮し、外商投資の促進活動を行うことが必要とされる。
二、外資系企業投資参入の具現化
法律に基づき、外資参入の特別管理措置(ネガティブリスト管理制度)の実施を前提に、市・区レベルの全体の産業配置と役割分担及び重点に開発される個別地域の両面を考慮し、外資導入の企画・誘致を強化する。
三、外商投資の円滑化対策
外国投資者に対し、多国籍企業の地域本部や各種職能組織の深センへの設置及び投資性公司の新設を励まし、中国本部からアジア太平洋本部やグローバル本部への昇格を支援する。さらに、資金の支援、費用の免除、土地や経営場所の確保、公共サービス、人材導入、クロスボーダーファイナンス、対外送金と外国為替の各分野で、必要とされる優遇政策を打ち出す。また、新型コロナウイルスの流行による影響を考慮し、本人が現場・窓口に来られない場合や原本の提出が難しい場合の対応をより柔軟にする。
四、外商投資企業の権益保護の強化
知的財産権の保護を中心とした重要な分野において、法的権益の保護に関する法規の細分化が整備される。例えば、知的財産権の侵害について、経済特区立法の形で深セン市における知的財産権に対する懲罰的賠償制度を確立し、より厳格な罰則が活用されやすいように、懲罰的賠償の金額を確定する六つの状況を明確にした。
五、外商投資に関連する政務サービスの最適化
改善が喫緊の課題とされる政務サービスは、外国投資者に対する政府支援サービスの標準化、外国投資促進のための公共サービスシステムの構築、外国投資のガイドラインの作成と公表、外国投資のためのビジネス環境の評価、重大な外資投資プロジェクトのサービス体制の立ち上げ、科学研究施設と設備の開放と共有、グローバルビジネス人材の育成、外国投資に関する情報の送信、通関の円滑化などである。
以上