外国投資者による上場会社への戦略投資について
2025年夏以来、中国株が上昇傾向を見せており、8月18日の上海総合指数の終値が3728.03となり、約10年ぶりの高値水準であった。Deep seekを代表とするAI産業や、Unitreeを代表とするロボット産業における優良企業の急成長がその一因であるとされている。では、日本を含む諸外国の投資者は、どういう条件を満たせば中国の上場企業に直接投資できるか、ここで中国の関係規制を簡単に振り返ってみたい。
昨年11月1日、商務部や中国証券監督管理委員会などにより、改正された「外国投資者による上場会社の戦略投資管理方法」(以下「新管理方法」という)が公表された。この改正の主な目的は、中国経済の持続的発展に伴い、証券市場を更に拡大させることにある。以下、5つの要点に分けて簡単に解説する。
一、投資者の範囲拡大
今回の改正で注目すべき内容の一つは、海外投資者によるA株市場への投資に関する5つの要件の撤廃・緩和である。具体的には、①外国の自然人を投資主体として追加する、②投資者の資産要件緩和(例えば、保有する資産総額が1億米ドルから5,000万米ドルに)、③TOB(株式公開買付け)が利用可能に、④海外の非上場企業とのクロスボーダー株式交換が利用可能に、⑤持株比率の条件緩和及びロックアップ期間の短縮、などを挙げられる。
これら要件の撤廃・緩和により、B株市場と同様に海外の自然人でも投資が行えるようになった。また、以前のQFII制度よりも投資条件が緩和されたため、より多くの海外個人投資家や機関投資家の参入が期待できそう。
二、投資方法の多様化
新管理方法では、ロックアップ期間が3年から12か月へと短縮されたため、資金繰りの効率が大幅に向上し、投資面での柔軟性が生まれた。また、それまでTOBに関する明確な規定がなかったため、関連規定で定められた「上場株式30%以上の購入時に発生する強制TOB実施義務」により行われたケースがあったが、新管理方法の規定により、株式の5%を超える場合はTOBが可能であると明確にされ、取引面での柔軟性も生まれた、といえよう。
その他、クロスボーダー株式交換による投資や支払方法が新たに規定されたことで、中国国内の上場企業がこれらにより海外の資産を購入できるようになり、海外投資の利便性が高くなる。
三、投資手続の簡略化
今回の改正により、改正前に行われた、外国投資者又は上場企業に対する商務部の事前審査が取り消され、商務主管部門への投資情報の提出に変更された。また、取引終了の期限や登記に関する手続の関連規定も廃止され、外国投資家による投資の手続がだいぶ簡略化された。
四、仲介機関による監督責任
上記三の通り、商務部による事前審査が取り消され、外国投資者に対する行政側の監督が緩くなる、と見られている。そのため、今回の改正では、上場企業への投資にかかる仲介機関が行政側に代わり監督の役目を一部担うことになり、「外国投資者は中国国内で登録されている、要件を満たした財務顧問を採用しなければならない」などの規定が定められた。
五、投資者承諾制度の導入
今回、新たに外国投資者による任意承諾(変更・撤回不可)の規定が設けられ、仲介機関や上場企業、関係者の要求に応じて投資の合法性を承諾するという対策が用意された。仮に、新管理方法の定める要件を満たさない虚偽の供述により投資を行った場合、ロックアップ期間内の株式譲渡が禁止されるにとどまらず、然るべき要件を満たしてからの12か月満了までに株式の譲渡又は質入れを行ってはならない、としている。
ちなみに、先週の8月11日に、高分子材料と半導体設備の大手である深圳至正社(証券コード:603991)が、新株の発行等によって、半導体リードフレームワークの世界的大手であるAAMI社(Advanced Assembly Materials International Limited)の株式をほぼ全数取得することは、上海証券取引所により承認された。これは、新管理方法の公布以来、外国投資者がクロスボーダー株式交換で、上場会社に戦略投資を行なった最初の成功事例である。